第2期中期計画(2011年度~2015年度)

ITS総合戦略2015

ITS Japanは、2030年の「交通社会のありたい姿」を想定した 「ITSビジョン2030」を実現するために、まず2015年までの取り組むべきテーマを「ITS総合戦略2015」として策定しました。

下記に示す4つの重点テーマについて活動を行っています。

  1. 1.次世代協調型システム(ITS GREEN SAFETY委員会)
  2. 2.次世代モビリティネットワークシステム(ITSによるスマートコミュニティ実現委員会)
  3. 3.観光・災害情報ハイブリッドシステム(災害時/平常時ハイブリッド情報システム委員会)
  4. 4.国際展開戦略企画(国際展開戦略検討会)

中期計画(2011年度~2015年度)の策定

 中期計画における取り組み領域

ITSは、モビリティの側面から経済成長やQuality of Lifeの向上など発展を支え、地球温暖化や交通事故などの課題を解決する手段を提供します。しかし、これらの課題はITS技術のみで対処できるものではなく、インフラや人の行動を含めた総合的な交通のあり方の検討に根ざしたものでなければなりません。また、そのような検討は行政や関連組織により、蓄積された専門的知見や裏付けとなるデータに基づき進められているので、ITS Japanとしては、関連機関との連携を密にし、ITS Japanの果たすべき役割や活動の進め方にタイムリーに反映してゆく事が必要であります。

中期計画では、このような考え方でITS Japanが取り組むべき主な活動領域を次のように設定しました。

A.  エネルギー供給の革新に対応した交通システム
B.  次世代協調型運転支援システム
C.  情報共有型社会の交通システム
D.  地域と連携したITS展開促進

これらの領域に取り組むにあたり、体制面では国際活動と事業基盤を特に強化すべき領域として設定しました。

X.  国際連携と海外展開支援
Y.  産官学連携促進と事業基盤の拡充

 img_sougou_fukan_map

 背景

ITS Japanは、2005年に特定非営利活動法人としてスタートをきり、最初の中期計画(2006年〜2010年)に基づく5カ年の活動を終えました。この中期計画では、2004年に官民でまとめた「ITS推進の指針」に沿って、安全・環境・利便・地域活性化に資するITSの活動を推進し、また、共通基盤の整備や国際活動にも注力しました。

法人化にあたって、ITS Japanがより主体的な役割を担い、ITSシステムの開発・実用化の構想を立案し、関連諸施策や官民連携プロジェクトを提言・推進することが求められました。これを受けて、官民連携プロジェクトとして、政府のIT新改革戦略に基づくインフラ協調安全運転支援システムの開発・大規模実証実験・全国展開の開始や、総合科学技術会議の社会還元加速プロジェクトにおけるモデル都市・モデル路線での実証実験および横断的施策の検討などで成果を上げる事ができました。

その間、交通システムを取り巻く社会環境も大きく変化しました。とりわけ、地球温暖化、経済活動のグローバルな一体化、情報通信ネットワークの進化と普及などにより、ITSで扱うべき分野が拡大し新たな視点での活動の再構築が必要になってきました。

そこで、新たな中期計画(2011年〜2015年)では、推進中の取り組みテーマの実用化・普及を加速するとともに、環境変化に対応した新たな取り組みを加えました。また、ITS Asia-Pacificの新組織が発足し、世界各地域で戦略的なITSの取り組みが活発化してきており、国際連携と戦略的海外展開に注力するとともにITS Japanの活動基盤を充実するなど体制の強化も織り込みました。

さらに、この中期計画策定の終盤、2011年3月11日に東北から関東の広範囲が未曾有の東日本大震災に見舞われました。ITS Japanも救援活動に貢献すべく会員各社にご提供いただいたプローブデータに基づく通行実績マップを公開しました。中期計画でも災害対応に注目し、モビリティー・エネルギー・情報ネットワークの確保のための自立分散化や冗長性の確保を考慮した新たな交通ビジョンの提案、交通関連情報の共通基盤や道路IDによる道路情報の一元化に基づく地域で主体的に運用できる情報システム構築などへの重点化を行いました。

目指す姿

ITS Japanでは、2008年にITS長期ビジョンをとりまとめました。2030年までに予想される社会的変化を多面的に展望し、次のような日本のありたい姿を描きました。

  • 活力ある社会
  • 健康で活き活きとした豊かな社会
  • 世界中の人が訪れ、住んで、働きやすい社会
  • 高齢者、障害者、子供が安全で安心して暮らせる社会
  • 人が社会や自然と上手く共生し、地球に優しい社会

そして、ITSビジョン2030では、このような社会を実現するために、ITSは次のようなモビリティの提供に貢献すべきであるとしました。

  • 自由で多様なライフスタイルを支えるモビリティの提供
  • 社会活動の発展に寄与するモビリティの向上
  • 社会や自然と共生するモビリティの提供

ITSを取り巻く環境の変化

前中期計画では、策定当時の国内外の政府の交通分野での問題認識に沿って、道路交通の安全を最優先して官民連携プロジェクトに着手しました。その後、地球温暖化対策の重要性が国際的に強く認識されるようになり、日本でも社会還元加速プロジェクトでは、交通部門からの二酸化炭素排出を削減するための自動車の燃費向上、交通流の円滑化、交通行動の変容の総合的取り組みを強力に推進しています。IT戦略本部の新たな情報通信技術戦略においても、グリーンITSとして重点テーマに掲げられています。自動車のエネルギー転換は、既に駆動系の電動化がEV、PHVなどで始まっており、エネルギーの需給の仕組みと一体的に将来の交通システムを構築する必要があります。

情報通信分野でも大きな変化がおこっています。インターネットが普及し日常生活に浸透すると同時に、情報の送り手と受け手の垣根がなくなり、個人の情報発信が容易になりました。さらに、スマートフォンの普及と同時に移動体通信の飛躍的高速化とデータ通信接続料金の定額制が進み、まさにユビキタスな情報通信環境が整いつつあります。ITSにおいても、交通情報の収集・活用の仕組みが変わりつつあります。感知器の情報に加えてプローブ情報を共通基盤化することで交通課題の解決や充実した情報提供の可能性が飛躍的に広がります。課題はあるものの、公的機関や企業が社会的責任を背負って行うハードな情報と、個人発のソフトな情報が補完し合う交通社会を構築する事が必要であります。このように、交通ネットワーク、エネルギーネットワーク、情報通信ネットワークを一体でとらえ、次世代のモビリティを構築しなければなりません。

一方、国際活動は、欧州(ERTICO)、米州(ITS America)とのグローバルな3極連携とITS Asia-Pacificに参加する14カ国・地域のアジア太平洋地域連携の二つの枠組みで進めてきました。欧米は地球温暖化対策やグローバルな経済活動の競争力強化といった国際戦略に位置づけてマルチモーダル交通・物流の取り組みを強化してきています。また、従来ITSの活動に参画していなかった新興国の台頭に対して既存の3極の範囲を超えた真にグローバルな活動体制の構築が必要になってきました。アジア太平洋地域では、ITS Japanが提唱して、参加国・地域の平等な代表権と負担の下でITS Japanがリーダーシップを発揮する新たな覚書に基づくITS Asia-Pacificの組織をスタートさせました。このようにダイナミックに進展する国際情勢に即応した、国際連携と活動の海外展開を更に強化することも重要であります。

中期計画の基本方向

中期計画では、ITSビジョン2030で提示した社会を実現するための具体的取り組みを、新技術の発展や社会環境変化にも対応して、下記の方向で展開することとしました。

  1. 移動通信ネットワークの高速化と日常生活への普及がもたらす潜在力を活かした交通社会システムの進化
  2. 自動車の動力源の転換とエネルギー需給構造の変化を支え、モビリティーの持続的向上と省エネルギーを両立する交通システムの実現
  3. 経済活動の一層のグローバル化と担い手となる国・地域の構図の変化を先取りしたITS分野の国際連携のリード
  4. 誰もが多様なライフスタイルで活き活きと暮らす豊かな社会を支える自立的・効率的モビリティーの実現

現行テーマの加速と新たなテーマへの着手

日本におけるITSの取り組みは、1996年にまとめられた「ITS推進に関する全体構想」に基づき9つの分野で開発・実用化に着手しました。前中期計画では、2004年に官民でまとめた「ITS推進の指針」に沿って、安全・環境・利便・地域活性化・共通基盤構築を軸に、J-Safety委員会、DSRC等応用サービス普及促進委員会、新交通物流特別委員会、ITS調査・検討会、次世代デジタル道路情報委員会、中国交通信息化委員会で活動を推進してきました。これらの活動は、成果と課題を整理して新中期計画の活動領域の中に位置づけ、さらに、新たな活動テーマも加えて「ITS総合戦略2015」の中で発展的に再構成しました。

[ITS総合戦略2015]

  1. 次世代協調型システム
  2. 次世代物流
  3. 次世代モビリティネットワークシステム
  4. 都市創生
  5. 災害時/平常時ハイブリッド情報システム
  6. 国際展開戦略企画

推進体制の強化

活動領域が拡大する中で、限られたリソースで成果を上げるためには、幅広い関係先と連携し力を借りることが必要となります。一層の産官学連携強化の下で積極的に政策を提言し民間活動と一体的に推進するために渉外機能の強化を図ります。また、社会環境の変化や活動分野の拡大は、新たな業界から会員参加を促す事も重要であります。会員サービスも拡充し、収支基盤の強化にもつながる新規会員獲得に力を入れます。