ITSチャレンジ2015ワークショップ(2015年8月5日開催)

「ITSチャレンジ2015ワークショップ」開催結果
シビックテックとオープンデータから始まる地域イノベーション
 

ITSチャレンジ2015 第1回ワークショップの開催概要

日 時:2015年8月5日(水)
     15:00~17:30 ワークショップ
     17:30~19:00 名刺交換会(懇親会)
場 所:ITS Japan 会議室(日本女子会館ビル3F)
テーマ:シビックテックとオープンデータから始まる地域イノベーション
講演者:
  一般社団法人コード・フォー・ジャパン 代表理事 関 治之 氏
    
シビックテック事例紹介

  会津若松市 総務部 情報政策課 総務主幹 本島 靖 氏
    
会津若松市オープンデータ利活用の取組
ディスカッション:
 
2名の講演者、参加者を交えて講演内容を中心としたQ&A、ディスカッションを実施した後、名刺交換会(懇親会)で意見交換を行いました。

講演者プレゼン概要『シビックテック事例紹介』

1)シビックテックITS-Challenge2015_CFJ_2
 行政と地域住民が、テクノロジー活用を通じて社会課題を解決するモデルとして、世界的に注目されている。地域住民が、行政に不平不満を言うのではなく、『一緒に手を動かす』という考え方で、コード・フォー・ジャパンの理念も同様で活動している。

2)Code for Japan(CfJ)
 自分たちの街の課題を技術で解決するコミュニティとして「ともに考え、ともにつくる」という理念のもとに、市民からの課題や意見、行政が保有しているデータ、知見、ノウハウをもとにクリエイター(モノを作れる人)がプロトタイピング等を実施し、これらの事業化支援や地域の担い手を支援する組織として、コード・フォー・ジャパンを位置付けている。

 CfJの2つの事業
  1.フェローシップ:自治体の変革を応援
  2.ブリゲイト支援:市民コミュニティの活動を支援

3)オープンデータ および 各地のCode for Xの紹介ITS-Challenge2015_CFJ_3
 オープンデータの利活用について、各地のCode for Xが独自に活動を展開している。Code for Kanazawa(金沢市)では、「5374(ゴミナシ).jp」というアプリを作成し、正しいゴミの捨て方、捨てる日等の情報を提供した。このアプリはオープンソースとして、全国各地に展開されている。Code for Sapporo(札幌市)では、子育てママからの要望で「さっぽろ保育園マップ」アプリを作成した。保育施設の場所、児童受け入れの可否等を地図上に表示、検索できるものとした。これも全国各地へ展開され、“自由でオープン”だからこそ、地域ごとの主体性が発揮できオープンデータも利用しやすい。また、オープンデータ、オープンソースとすることで、他の地域への展開、改良、新たなアイデアによる機能追加が容易になる。

4)フェローシップとコーポレートフェローシップITS-Challenge2015_CFJ_4
 フェローシップは、高度なIT技術を持つ人材が自治体の中で1年間働くプログラムである。現在、福島県浪江町で実施中であり、フェローを中心に様々な改革を実施した。一例として、400名が参加してアイデアソンを実施して、600ものアイデアが発掘された。その中から反復型開発の実施により、14個のプロトタイプアプリを作成し、仕様書を作成した。コーポレートフェローシップは、“コトづくり人材育成”と“CSR”を兼ね備えた、短期研修システムである。一例として、企業のリーダー人材が行政職員として3~6ヶ月勤務し、行政のオープン化を支援、地域課題解決に向けた作業を実施する。現在、神戸市が受け入れ中。

5)海外でのシビックテック
 海外でのシビックテックの事例が紹介された。

【事例1】
 healthccare.govの立て直しが紹介された。システムの不具合が多発していたが、地元のテック企業が協力し6週間で修正、復旧された。これを契機に政府も地元のテック企業との連携を強めた。
【事例2】
 シカゴでは、毎週、庁舎内で地域の課題解決会議を実施している事例が紹介された。
【事例3】
 サンフランシスコでは行政側が、スタートアップの民間企業を招き入れ、一緒に地域課題を解決するサービスを検討している。

講演者プレゼン概要『会津若松市オープンデータ利活用の取組』

1)これまでの取組経緯ITS-Challenge2015_Aizu_2
 オープンデータへの取組みや動向への着目は、平成24年7月3日から開始しており、20日後には、市公式サイトからデータ公開を実施している。庁内検討チームを平成25年11月から設置し、定期的に活動している。これまでには、オープンデータ活用基盤の構築として総務省実証事業「ICT街づくり推進事業」の委託を受け、会津若松市「地域公共ネットワーク基盤構築事業」を実施し、“ICTサービス・プラットフォームの構築”“ビックデータ(交通情報)収集の実証”等を行ってきた。

2)データ活用基盤「DATA for CITIZEN」
 会津若松市で運用しているデータ活用基盤「DATA for CITIZEN」について紹介された。地域の課題やニーズ等の要望を吸い上げ、課題解決に必要な情報を市役所でオープンデータとして公開する。 このオープンデータが、地域コミュニティ(Code for AIZU)や地元のICTベンチャーが構築するアプリ等で活用されることによる地域の課題解決を目指している。

3)地域コミュニティとの連携ITS-Challenge2015_Aizu_3
 地域コミュニティのCode for AIZUとの連携について、紹介された。「行動for 会津(Code for AIZU)」と表現することで何の団体かイメージしやすいようにしている。「ITスキルを活かして地域の課題を解決」する活動をしており、具体的には「消火栓マップ」のような活動事例が挙げられる。また、「オープンカフェ会津」と称して、地域で活動する方を講師に招き、様々なテーマの課題などを共有する場を設けている。

4)会津大学との連携による人材育成ITS-Challenge2015_Aizu_4
 会津大学との連携によるアナリティクス人材育成を紹介された。会津若松市のオープンデータを利用し、会津若松市の取組みや課題について、「ベンチャー体験工房:ビジネスアナリティクス」として、議論等を定期的に実施している。日本では、ビッグデータ関連の雇用が36万5千人分増える見込みだが、実際に雇用条件を満たせる人材は11万人程度である。そのため、データアナリティクス人材の不足を解消すべく、総合戦略としてアナリティクス人材育成に取り組んでいる。

 5)現状の課題とこれからの取組
 会津若松市のオープンデータ関連による現状の課題とこれからの取組みについて、紹介された。オープンデータによる「改ざん等の不安の解消」に向けた取り組みとして、出来るだけ簡単に真正性を確保するため、「原本データを公開すること」を実施している。他には「業務負荷が増える懸念の解消」、「行政の効率化・経済の活性化」については、オープンデータとして公開することで、地域企業、コミュニティ、NPOなどの協力を得て、行政ではできない新たな可能性が拡大する。オープンデータコンテストも昨年より開催しており(昨年は応募総数63件 最高賞金20万円)、今年も実施中である。

主なディスカッション

 2名の講演者、参加者を交えて講演内容を中心としたQ&A、ディスカッションを実施した後、名刺交換会(懇親会)で意見交換を行いました。参加者、講演者の主なディスカッションは以下のとおりです。

Q.オープンデータ、スマフォとかいうと若者は問題ないが、高齢者にはなじまないのでは?

A.音声(電話)によるサービス等も実施していますが、皆がすべて使えなくても使える人がフォローしていけばよい、という考えもある。データだけでは幸せにできないので、開発者、サービスする側の工夫が必要である。

Q.行政との話し合いの場を設けているが、職員は業務優先であり業務命令でしか動けない。どうすれば良いか?

A.シビックテックも人(個人)に依存している状態であるが、中には人員を割り振っている行政もある。神戸市は、オープンデータ専任で3人配置している。行政の理解がどこまで浸透するか、が課題だと思う。役所としては、“市民と対話の場”=“ 市民と「対峙」”として構えてしまう場合が多い。   市民側も文句をいう人がいるとやりにくいと思う。やはりコミュニケーションが大切で、WinWinになる関係が必要である。

Q.日本のデータの扱い方、海外との比較がわからない。日本はデータの取扱いに弱いのでは?

A.データをどう使うかをもっと検討すべき。使えないデータかもしれないけど、そこにビジネスがあるかもしれない。オープンデータは、データドリブン(意思決定)が重要とされている。日本は非常にこの部分が弱い。

ITS-Challenge2015_DC_1

ディスカッション

ITS-Challenge2015_DC_2

Code for Japan 関 氏

ITS-Challenge2015_DC_3

会津若松市 本島 氏