道路情報基盤活用委員会
本委員会は、活動予定期間を2015年3月までとしていましたが、委員会活動の目的を達成し、予定通り、終了となりました。委員会活動にご参加いただいた皆様、ご支援・ご協力いただいた皆様に感謝いたします。
委員会活動の経過、結果の概要を以下に記載します。
⇒ 道路情報基盤活用委員会の活動概要サマリ(印刷用)はこちら
1.活動の経緯
(1)委員会設置の経緯
2004年度~「次世代デジタル道路地図研究会」
・走行支援サービスを実現するために必要となる地図データの要件を検討、まとめ
→2005年8月「次世代デジタル道路地図の実現へ向けた提言」
2007年度~「次世代デジタル道路情報委員会」
→2008年4月「安全・環境に資する走行支援サービス実現のための道路情報整備と流通に
向けた提言」
→2011年「道路情報基盤活用委員会」
≪経路案内サービス ⇒ 新たな走行支援サービスに必要な地図情報環境を準備する≫
サービス実現の前提となる道路関連情報の鮮度・精度・網羅性の確保には、官(及び民)の持っている道路関連情報の流通が必要だが、既存の位置参照方式や道路地図の作成プロセスでは、鮮度・精度確保や情報流通に課題(注:下記枠内)がある。課題解決の方法として、位置参照方式として「道路の区間ID方式」、地図作成のソースとして「道路基盤地図情報(道路詳細図)」の利用を提案し、これを道路情報基盤と呼称し、その普及促進を図る、とした。
道路関連情報の流通における課題 ①位置参照方式の課題: 座標(経緯度など)による位置情報交換の場合、地図毎の緯度経度精度の差異(道路の図化のずれ、地殻変動他)により、道路における異なる位置を示してしまう可能性がある。 ⇒道路の区間ID方式:道路の区間と交差点等の参照点に恒久的IDを与え、参照点からの相対位置で位置表現 ②道路地図作成プロセスの課題: 国土地理院の地図等から道路地図を作成する場合、航空測量等によるため、道路地図となるまで時間がかかる。 ⇒道路工事完成図のCAD図面から変換生成されるGISデータ道路基盤地図情報を道路地図ソースとして活用 |
(注)道路の区間ID方式(旧道路の共通位置参照方式):
道路の区間と参照点(交差点、県境、距離標等)を用いて相対的に道路上の位置を特定する方式。経度・緯度誤差に左右されず、また恒久的なIDを付与するため、道路ネットワークの変更に柔軟に対応可能であり、またIDのみを共通化させるために異なる道路ネットワークとの対応付けが容易である。
参考:道路の区間ID方式の概要説明資料等は下記参照
((一財)日本デジタル道路地図協会ホームページ)
・「道路の区間ID方式の概要」
・「道路の区間IDテーブル掲載ページ」
(2)活動目的
今後の様々なITSサービスの実現加速を目的に、道路に関連する静的あるいは動的な情報が、広く容易に活用でき、流通できるようにするための「道路情報基盤」を提案し、その活用の働きかけを行う。
(3)委員会の期間、参加者
期間 :2011/4~2015/3(4年間)
参加企業 :会員全体から公募(31社)、 参加機関:(3者)
≪ITS Japan会員企業≫ ≪団体、機関≫
自動車関係(OEM) 4社 日本デジタル道路地図協会
電機 4社 国土技術政策総合研究所
カーナビ車載器他 7社 国土地理院
地図、ナビ地図、測量 7社
道路会社、交通事業者 4社
コンサル 5社
(4)活動の概要
各年度、以下の内容の検討を行った。
<第1期>
・2011年度:
①道路の区間ID利用における技術的課題の解決・利用方法の明確化、
②道路の区間IDの標準化を働きかけ
⇒①作業会を設置・検討し結果を2011年度報告書に記載 ②ISO/TC204/WG3に要請
・2012年度:
①道路の区間IDの自治体での利用シーンを検討、
②道路の詳細図の利用事例を抽出
⇒TGを設置・検討し、①行政サービスでの利用、②協調システムでの利用を報告書に記載
・2013年度:
①道路の区間ID普及促進(利用シナリオ作成、自治体訪問)、
②道路の詳細図の利用方法整理
⇒①自治体と意見交換しシナリオ作成、②交差点通過支援での利用方法を検討
・2014年度:
道路情報基盤を活用した自動運転への情報の連携方法検討、
自動走行システムで、静的・動的な情報を活用し構造化する手段として、道路情報基盤が有効であることを提案。SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)自動走行におけるダイナミックマップ(地図情報高度化)の民間側検討活動に参加し、委員会の活動成果をもとに、道路情報基盤の利用も含め、検討支援。
2.活動の成果
(1)概要
・道路情報基盤の利用面から技術的課題への対応方向性や利用のシーン・メリットを明らかにしその結果を報告書にまとめ、公開した。
・道路の区間IDの標準化を、ISO/TC204/WG3に働きかけ、ISO化を実現した。
・委員会活動、G空間EXPO他での講演活動、ITS世界会議のセッションオーガナイズ等で衆知
・関係する機関の委員会活動等に参加し、その検討支援を行った。
・それらの結果、複数のフィールド・アプリケーション領域での利用検討が始まった。
(2)成果の詳細
1)委員会のアウトプット
各年次の検討結果を、年度ごとに報告書にまとめ、ホームページで一般公開した。(2011年度~2014年度)
2)標準化
道路の区間ID方式をISO17572(位置参照方式)part2に追記する形で、2015年1月15日国際標準が成立した。
3)衆知活動
ITS世界会議:道路情報流通の必要性、仕組み、サービスを議論するセッションを企画実施、他 2011オーランド、2012ウィーン、2013東京、2014デトロイト
4)外部委員会への参加と、その検討支援
・位置参照方式検討会(国総研、DRM、三菱総研)
・道路地図基盤の整備・更新・活用に関する研究会(国土交通省道路局、国総研)
5)複数のアプリケーション領域での利用検討、実証実験等のはじまり
・安全運転支援:阪神高速道路「プロジェクトZ NAVI de HANSHIN」分合流部でドライバーに情報提供
・交通流分析:つくば市「つくばモビリティ・交通研究会」・・人の動き(都市活動)の把握
・データ流通円滑化:総務省「G空間プラットフォーム構築事業(NICT、東大、日立)」
・自動走行 :SIP自動走行・ダイナミックマップ ・・・地図情報の高度化、地図構造化
これらの利用検討や実証実験の内、特にSIP自動走行は、委員会設置当初の狙いとした走行支援サービスを包含するものとなり、道路情報基盤利用の具体化による自動走行システム実現の加速、道路関連情報流通の実現、それに伴う各種ITSサービスの実現加速が期待される。
3.委員会の扱い
委員会の目的である、「基盤(要素技術)側からの道路情報基盤(道路の区間ID、道路の詳細図)の提案と、その活用の働きかけの活動」はやり終え、今後は、各フィールド、各アプリケーション側での利用検討、ビジネス創出にゆだねることが適当と判断した。よって、「道路情報基盤活用委員会」は、目的を達成し、2015年3月末で終了となった。
今後の取組み方向について
委員会メンバーのアンケート回答からは、類似の領域(デジタル道路地図や道路関連情報の流通など)での新たな委員会の設置を期待する声が多かった。
期待する内容としては、
・地図情報のグローバル展開や国際標準化の道筋を議論
・走行支援、自動走行に関する、地図情報の高度化・整備の方向付け等を、各ステークホルダーの参加や連携の下で議論
・様々な領域での道路情報基盤の在り方や、地図情報をキーとしたビジネス創出の議論
などが挙げられている。
地図や位置情報基盤は、オープンデータ・ビッグデータの利活用や、自動走行システム等、ITS Japanの他の取組みとの関連性も深い為、ITS Japan全体の今後の取組み方や横断的体制検討とも併せ、新たな委員会を設置する方向で検討する。