新交通物流特別委員会
COCNの提言を受けて新交通物流特別委員会を設置
2007年4月、産業競争力懇談会(COCN)が2020年を目標に実証実験によるPDCAをまわし、渋滞・CO2排出量の半減、交通事故死亡者を限りなくゼロにしようとする「交通物流ルネサンス実現に向けた提言」を発表、大局的な視点と複合的なアプローチにより、特にITS技術によって課題の解決に当たること、産業界がタスクフォースを組んで先導的役割を果たすことが提言されています。
【産業競争力懇談会(COCN)が提案した取り組み体制 《産業競争力懇談会HPより》】
ITS Japanはこの提言を受け検討した結果、ITS Japanのミッション及び位置付けより、COCNの提言に積極的に取り組むべきとの結論に達し、2007年10月、常任理事会直轄の「新交通物流特別委員会」を立ち上げ、この提言の実現に向けた活動に着手しました。
新交通物流特別委員会の取り組み方針は以下のように設定しました。
・モデル都市、モデル路線による実地に即した取組みを行う
・目標実現に向けて、PDCAを繰り返し実施しながら推進する
・官民の関係者が連携一体化して推進する
具体的には「都市創生WG」と「高度物流WG」の2つのワーキンググループを設置して検討を行うこととしました。
内閣府の社会還元加速プロジェクトへ民間としての参画とロードマップの作成
2007年11月に内閣府の総合科学技術会議の中に「社会還元加速プロジェクト」として6つの重要テーマが設定され、その内の1つが「情報通信技術を用いた安全で効率的な道路交通システムの実現」のテーマとなりました。このプロジェクトに産官学を構成員としたタスクフォースが設置され、ITS関係4省庁5局と専門家として大学関係者及び産業界としてITS Japanが参画することになりました。このタスクフォースで策定した技術テーマのロードマップは、関係省庁の科学技術予算にも大きく関係しており、ITS Japanの新交通物流特別委員会で策定する「産業界ロードマップ案」の提言先として相応しいものであることより、社会還元加速プロジェクトを「産官学タスクフォース」と位置付けて取組むこととしました。
2007年度、社会還元加速プロジェクトのタスクフォース会議(ITS関連)で、ITS Japanより産業界のロードマップとして分野別技術開発課題を提案し、これをベースに関係省庁及び専門家の方々による議論の結果、最終的に内閣府事務局がロードマップをまとめ、2008年5月開催された「第75回総合科学技術会議本会議」(議長:福田総理)に提出され、正式に承認されました。
主な活動内容
ITS Japanでは、内閣府の社会還元加速プロジェクトのタスクフォースに参画、連携しながら、本ロードマップに沿って2012年までに実証実験を行うべく、新交通物流特別委員会での活動を推進しました。以下は主な活動内容です。
- 内閣府の社会還元加速プロジェクトでの活動
①モデル都市での実証実験に向けた活動
社会還元加速プロジェクトのタスクフォース会議は2009年4月にITS実証実験を行うモデル都市として青森市、横浜市、豊田市、及び柏市を選定した。ITS Japanの都市創生WGでは2010年度、4つのモデル都市を訪問、実証実験の具体化に向けての課題抽出、横断的施策の提案などをおこなった。
②都市内物流の実証実験に向けた活動
都市内物流の実証実験実施地域について検討した結果、大丸有(大手町・丸の内・有楽町)地区と博多アイランドシティ地区に決定、各地区で抱えている課題解決のためのITS技術について検討、提案した。
<モデル都市における取組み> -
ITS Japanの新交通物流特別委員会での活動
①都市創生WG
モデル都市の現地視察を実施。下記に示す各都市横断的施策の検討を行った。
・超小型モビリティの社会試用
・バスロケ/オンデマンドバスの高度化
・自転車利用の促進
・シ-ムレスなパーク&ライドの実現
②プローブ共通基盤分科会
複数の事業者が保有するプローブ情報を集めて1つのデータに集約することによる効果について評価・検討した。なお、2011年3月11日に発生した東日本大震災に際しては、データ集約に参加していた4社の協力で、「自動車・通行実績情報」の配信をITS Japanのホームページにて行った。③効果評価分科会
モデル都市へのヒアリングを通し、各都市で計画されている施策情報を収集し、個々の施策ごとに効果評価方法を検討、整理した。各モデル都市で実施する効果評価手法内容の共有化を図り、各都市への適用拡大を検討中である。
④国際シンポ・コンペ分科会
ITS世界会議において「都市」と「物流」領域のセクションを企画した。
⑤次世代物流WG
荷主が主体となり、物流事業者、道路運営事業者、アドバイザーなどで構成して、国及び自治体と連携しながら、実証実験を行なう実施主体と成り得る「物流コンソーシアム」の構築に向けて検討を行った。
◎自動車業界共同輸送プロジェクト
乗用車の陸上輸送のコスト、CO2削減効果を試算、共同輸送ルートの可能性を確認、候補ルートの絞り込み
◎電機業界共同輸送プロジェクト
パナソニックと日本電気によりトライアル輸送を実施、2010年10月から共同輸送の実運用を開始。この取り組みによりCO2排出量が57t削減、交通渋滞の緩和、トラックの騒音低減などの効果あり。
◎都市内物流検討会(大丸有地区と博多アイランドシティ地区の対応)
ITS技術によるCO2把握、安全安心(ヒヤリハットなど)、物流効率化(軒先情報共有)などの実証実験の検討を実施。博多アイランドシティでは、2011年にITSスポットによる物流業者への情報提供による物流効率化の効果検証実験を実施。
◎高度物流情報システムプロジェクト
「RFID完成車物流検討チーム」を設置、総務省『ユビキタス特区』事業と連携、効率的、実践的な施策の検討を実施。
⑥モデル路線実証実験分科会
エネルギーITS次号の一つである「自動運転・隊列走行の技術開発」プロジェクトにおいて、実用化、普及に関係する課題整理と今後対応すべき方向性を検討、提案した。