
ITS Japanは2005年6月、NPO法人として再スタートを切り6年目となりました。前身であるVERTISからの時代も入れると16年になります。これまで支えていただいた会員の皆様をはじめとして、政官産学、そしてITS関連諸団体などの皆様のご支援・ご協力に対して心より感謝を申し上げます。
さて、我が国のITSは、皆様ご案内の通り、1996年の「ITS推進に関する全体構想」からファーストステージが始まり、2004年の名古屋世界会議において発表された「ITS推進の指針」により、ITSの目標が、安全・環境・利便の向上に定められ、セカンドステージに進展しております。この間、カーナビ・VICS・ETCの車載器が、累計3,000万台規模で社会に普及し、今では、ITSは市民生活にとってなくてはならないツールになってきております。更にその発展系であるITSスポットやDSSS、ASVに代表されるインフラ協調システムが、いよいよ実用段階を迎え、安全性向上はもとより、環境問題やエネルギー問題等の解決手段としても活用されつつあります。
ITS Japanでは、インフラ協調システムの実用化に向けて、2009年2月の東京お台場の公道における実証実験のあと、関係省庁に路側インフラの整備をお願いするとともに、民間企業と協力して車載器の販売を開始し、路側と車側の一体化した普及方策を推進してまいりました。また、政府の総合科学技術会議の社会還元加速プロジェクトにつきましては、ITS Japanも民間を代表して参画しておりますが、昨年度は2012年までの実証実験を目指して、横浜市や豊田市等のモデル都市やモデル路線での実証実験の横断的な実験項目の検討などを行ってまいりました。
さて、欧米では、移動・交通に関わる安全、環境、エネルギー等の諸問題、経済発展や社会基盤整備等の分野でITSに関する新しい動きが出て来ております。安全面では、協調型の安全運転支援システムの開発・普及が、日米欧でほぼ同じスケジュールで進められており、2012年から2013年が、グローバルな視点から協調システムの実用化展開の方向を決める重要な時期になるものと思われます。環境・エネルギー面では、CO2削減とエネルギーの効率化、更にはエネルギー源の転換などがグローバルな重要課題として捉えられ、車両の燃費向上や電動化に加えて、プローブ情報を活用した交通流の円滑化や、多様な交通手段を最適に組み合わせて利用しよう動きが日米欧で検討されております。安全、環境、エネルギーの問題を解決しつつ、経済発展も維持していくことが、持続可能な交通社会の実現にとって重要な課題となります。このため、例えば欧州では、地域全域での相互運用を想定して、ITSを活用した陸・海・空を統合した交通・物流システムの構築と標準化に力を入れています。社会基盤の面からは、今後、道路、電力、通信等のネットワークが次世代の街づくり、交通社会作りの重要な基盤となり、クルマとネットワークを結合することができるITSが、これからの社会システムを変革する手段として重要な位置を占めてくるものと考えられます。
このような世界のITSの潮流の中で、ITS Japanでは、我が国ITSの将来を考える方策として、2008年度にITS長期ビジョン2030」を策定いたしましたが、その実現に向けて、2015年までの中期の「ITS総合戦略2015」の検討を行い、取り組むべき方向を検討しております。今年度から、これまでのプロジェクトを統合・整理するとともに、2015年までの中期の取り組みの方向として、新しく三つのシステムの構築とそれらに共通する基盤を整備することを検討しております。
一つ目のシステムは、安全から環境、利便にサービス機能を拡大した次世代協調型システム、二つ目は、クルマの電動化と充電インフラ管理やクルマと公共交通との最適な組み合わせ利用、さらにはプローブ情報の活用による交通流の円滑化などを、クルマと社会基盤ネットワークとの結合によって実現する次世代モビリティネットワークシステム、三つ目は、平時の地域振興と災害時の安全確保の両立を狙った観光・災害情報ハイブリッドシステムです。更に、共通基盤としては、これらのシステムの国際展開企画・戦略化の推進などに取り組んでいきたいと考えております。なお、国際活動に関しましては、特に成長著しいアジアに着目し、既にITS APの組織のあり方の検討や内閣府やアジア開発銀行研究所と連携しアジアITSワークショップの開催等の活動を行っております。
本年5月に内閣IT戦略室より「新たな情報通信技術戦略」が発表されました。そこでは、アジア市場の取り込みも視野に入れつつ、2020年までに約70兆円の関連市場を創出するとともに、ITSにより、2020年までに、全国の主要道における交通渋滞を、2010年比半減と自動車からのCO2排出削減を加速するなど、意欲的な目標が掲げられております。ITS世界会議が東京で開かれる2013年は、社会還元加速プロジェクトの実証実験が完了し、インフラ協調型システムが大きく進展する時期にあたります。このタイミングを活かし、2013年のITS世界会議東京では最先端の我が国ITSを世界に発信するとともに、ITSビジネスを大きく伸ばす機会にしたいと考えております。
ITS Japanは、市民生活の質の向上を図るとともに、我が国の経済発展の牽引役としての役割も果たしていきたいと考えております。今後とも、引き続き多くの関係の皆様のご支援とご協力を賜りますようお願い申し上げます。
2010年10月8日
ITS Japan
会長 渡邉 浩之