第8回ITS地域交流会 in 中国地方2015(2015年9月18日)

【第8回 ITS地域交流会 in 中国地方2015 開催報告】
~交通の利便性向上による街や地域の活性化を考える~

2015年9月18日に、広島市において“ITS地域交流会 in 中国地方2015”を開催した。

1.実施概要

 日本の多くの地方自治体では、医療、介護、福祉等の負担が増加する中で、コミュニティ復活、公共交通維持、地元産業活性化など複合的な課題解決が求められている。先進的な地域では、地元産業、地域コミュニティ、自治体などが連携して、交通利便性確保だけでなく地元経済の好循環と地域活性化につながるITS、ICT利活用を含めた取組みが進められている。

 8回目となる今回は、「交通の利便性向上による街や地域の活性化を考える」をテーマに、地域の交通課題の解決に関心のある中国地方の自治体担当者、ICT/ITSシステム、オープンデータやビッグデータ等のまちづくりへの活用を考えている地域の事業者、研究者に参加いただいて、中山間地を多く抱える中国地域で、持続可能な暮しの拠点の姿と、そこでどのようなITS/ICTシステムやモビリティが求められ、それをどう活用すればいいのか?について、有識者による講演を聞き、参加者同士のグループディスカッション、登壇者によるパネルディスカッション、を行って議論した。

1) 日 時:2015年9月18日【金】13:00 ~ 17:10
2) 会 場:サテライトキャンパスひろしま 大講義室
3) 参加者:地域の交通課題の解決に関心のある中国地方の自治体担当者、ICT/ITSシステ
       ム、オープンデータやビッグデータ等のまちづくりへの活用を考えている地域
       の事業者、研究者
4) 参加人数 :  中国地方各県(5名)、中国地方各県内の市町村(13名)、
        国の地方支分部局(18名)、登壇者(5名)、地元企業・団体(16名)
5) プログラム:配布プログラム

  第Ⅰ部 講演
              ① 官民ITS構想・ロードマップ2015とIT利活用の促進に向けて 
                   (内閣官房 情報通信技術(IT)総合戦略室 参事官補佐 内藤 博道 氏 )
              ② 高齢者や交通弱者の足となる新モビリティ 
                   (広島大学大学院 国際協力研究科 教授       藤原 章正 氏)
              ③ 地域公共交通維持と地域活性化について
                  (一般財団法人地域公共交通総合研究所 理事長     小嶋 光信 氏)
              ④ 「小さな拠点」がつなぐ新しい交通・仕事・定住のあり方
                  (島根県中山間地域研究センター 研究統括監
         島根県立大学連携大学院 教授           藤山 浩 氏)

    第Ⅱ部 ディスカッション ~移動しやすく災害に強い安全なまちづくり~
     ・モデレータから話題提供
      新たなモビリティ活用による地方創生
                  (岡山大学 地域総合研究センター 副センター長 教授
                        一般財団法人地域公共交通総合研究所 理事    三村 聡 氏)
              ・グループディスカッション(グループに分かれて、参加者同士で議論)
              ・登壇者への質疑、パネルディスカッション、全体ディスカッション
                         (登壇者や他の参加者との討議、質疑応答)

2.講演概要

地域の創生、活性化に向け、まちや交通はどうあるべきか、そこに対してITS/ICTやクルマをどう進化させ、活用していけばよいのか、に関連し、ITS、地域公共交通、新モビリティ、小さな拠点、交通まちづくり、等の視点で講師の方々に講演いただいた。

 内藤氏は、本年6月に改定された「官民ITS構想・ロードマップ2015」の改定のポイント、次世代都市交通システムの地方都市での展開イメージ、関連して、地方創生IT利活用促進プラン、等についてお話しいただいた。

 藤原氏は、郊外住宅団地で起きている問題(居住者と街の施設が同時一斉に高齢化、住民の移動機能の低下、地域コミュニティの崩壊)や、パーソナルモビリティの保有行動や利用行動の調査結果に基づく社会実装に向けた課題等についてお話しいただいた。

 小嶋氏は、地方公共交通衰退の歴史と、この10年の、まちづくりや地域づくりを目指して公共交通を残すための運動、両備グループの公共交通再生への取組み、についてお話しいただいた。また、バス乗務員健康管理システムをはじめとする両備グループの公共交通へのIT活用事例についてもお話しいただいた。

 藤山氏は、交通や物流を分野を越えた複合輸送として束ねること、複合施設を有する「小さな拠点」を整備すること、人口減少を抑えるためには移住によって年間人口1%増を目指す「1%戦略」で効果が出ること、「郷の駅」構想、業務を掛け持ちさせ業務量をまとめて地域の自主組織に地域拠点の運営を委託する方法、拠点の域内経済循環、等々、持続可能な地域のために有効な考え方や取組み、についてお話しいただいた。

広島登壇者写真2

3.グループ討議およびパネルディスカッション

1) グループディスカッション、パネルディスカッション、全体ディスカッション
 参加者と登壇者が9つのグループに分かれて、 “住民の移動の希望と実現可能な公共的な移動サービスをどう合意するのか?”等について討議を行なった。そこで出た意見や質問をもとに、岡山大学地域総合研究センター副センター長の三村教授にモデレータとなっていただき、登壇者をパネラーとしたパネルディスカッションを行った。

 主な議論
  ●広島は平地が少なく山あいに作られたニュータウンが数多くあるが、そのような団地の小さな
   拠点化や、団地住民と周辺住民の交流をどうとるかには課題がある。
  ●高齢化の問題は、中山間地よりも、同時に入居して一斉に高齢化している団地の方が深刻。
  ●地域の活性化・生き残りのキーワードは「広場」「地産地消」「現場発社会実験で学びあい・
   磨きあい」
  ●中山間地での最も大きな事業は行政ではないか?救急車・消防車、職員の通勤のクルマ等を最
   大限に活用して地域の移動課題解決はできないだろうか?
  ●移動において、人(公共交通)と物(運送)の連携が必要、運行管理の法の壁が課題。
  ●ITSは「合わせ技」が必要。人だけではダメで、物とのハイブリッド、情報とのハイブリッド、
   更にスマートシティのようなエネルギーの地産地消循環にもITS(ICT)が関わることで本当のブ
   レークスルーが生じて、ITSと小さな拠点の両方がレベルアップする。
  ●個人の移動履歴と公共交通車両の位置情報はそれぞれ通信事業者と交通事業者が持っている。
   これらを融合すると便利に使えるが、どちらも一つの自治体や一つのIT企業が持つものでは
         なく、公共性の高いデータインフラとして整備されるべき。
  ●われわれは「歩かなくて良い」「待たなくて良い」「楽をしてよい」という事に慣れすぎてい
   る。健康のためにも、有限なリソースで地域で暮らし続けるためにも、便利すぎない「丁度良
   い加減」が大事。
  ●待ち時間を少なくするだけでなく、待ち時間が価値を生むようなシステムづくりも必要。

広島討議写真

 

4.最後に

 本交流会の講演や議論で得られた知見、本交流会で生まれた人の繋がりが、今後の地域のまちづくりや、それを支援するしするITS/ICT技術の活用等、参加各位の業務に役立てば幸いである。

《 参考資料紹介 》

 ・ITS地域交流会とは?(ITS Japanの地域ITS活動)